【3】の続きです。ぜひ【1】から読んでいただけると嬉しいです。
メンタルどん底。この状況をどうにか打開したい
もうすぐ4月。新人さんもたくさん入ってきて、いよいよ先輩になる。
メンタルはボロボロ、体調も万全ではない。先輩や師長さんには、いまだ伝えられていない。でも、こんな状態で先輩になるわけにはいかない。
このままじゃダメだ。早くどうにかしないと。
そう思った。
4月という、1つのタイムリミットが迫っている。
メンタルも体調も最悪なこの状況を、1日も早く打開したい。
その一心で、必死に毎日の仕事をこなした。
まずは、恐ろしく低いレベルの報連相を少しでも改善すべく、「しっかりして!」と言われたあの日から、自分なりに意識して行動していた。
自分自身についての「相談」はなかなか難しい。本当に難しい。本気で師長さんにまで相談しようと思ったのに、できなかった。
ならば、まずは仕事中の「報告」「連絡」から始めようと思った。ひとまず、「今、自分がどこにいて何をしているか」「これから何をするか(これからの自分のスケジュール)」「今、何が終わっていて何が終わっていないか」「何を手伝ってほしいか」。とにかく、「行動する前」に、これらを先輩に伝えるように意識した。
「そんなの、新人レベルじゃないか」「いまさらそんなこと?」
そう思われるかもしれない。実際、そういうレベルだと思う。
でも、「そんなレベル」の報告・連絡すら、私はまともにできていないのだ。この状態をまずは改善しなければならない。
そうやって報連相を習慣化して、自分の中に染みつくよう実践していった。
そしてもう1つ、意識するようになったこと。
「先輩と積極的にコミュニケーションを取る」
経験が少ない技術、できないこと、知らないことは山のようにある。ということは、先輩に教えてもらうことも山のようにある。先輩との距離を縮めて、少しでも話しやすくなれば、「できない」と助けを求めやすくなったり、報連相がこまめにできたりできるのではないか、と思った。
今までの私は、先輩を無意識に避けていたのかもしれない。先輩とは業務中や帰り際に話すくらいで、昼休みに雑談したり、自分から話しかけたりすることがあまりなかった。昼休憩中も、できるだけ早くご飯を食べて、すぐに記録をするためにパソコンに向かっていた。そうしないととても終わらないからだ。
でも、もっと先輩と仲良くなって、気軽に話せるようになれば、絶望的なレベルの報連相を改善するきっかけになるかもしれない。そう思った。
そこで、朝、先輩に会ったら挨拶とともに、自分から少しの雑談をするように心がけた。眠そうな様子があれば、「昨日は寝るのが遅かったんですか」「昨日の日勤も忙しかったですか」とか。ペアの先輩には「今日も忙しいですね。頑張るのでよろしくお願いします」とか。昼休憩では、休憩中の他の先輩とできるだけ一緒に過ごして、先輩の会話に加わるようにした。よく分からないネタで会話に入れなくても、とりあえず一緒の空間にいるようにした。退勤する時にも、できるだけ先輩と話してから帰る、または一緒に帰るようにした。
そうやって、少しずつ行動していった。
とにかく毎日必死だった。
でもその甲斐あって、ほんの少し先輩と話しやすくなって、報連相もできるようになってきた実感があった。この「できるようになってきた」という感触は久しぶりだった。本当に、いつぶりだろう。
なんだか、少しメンタルも回復してきたような気がした。
回復の兆し
ある日勤の日。
一度も怒られずに帰宅した。
もちろん、その日もできないことはあったし、先輩にたくさん聞いて、教えてもらったり、手伝ってもらったりした。でも、報連相が足りなくて怒られたり、仕事の抜けがあって指摘されたりすることはなかった。
すごくほっとした。「今日は報連相がうまくできた」と思った。
ここ2ヶ月、落ち続けていた自己肯定感が少し上向いているのが自分でも分かった。
そしてその翌日。
この日はベテランのBさんとペアだった。Bさんは厳しくて有名な先輩だ。新人にだけ厳しいのではなく、誰にでも平等に厳しい。しかしすごく仕事ができる人で、いつでも根拠のある看護をしている。Bさんに教わればとても勉強になる。指導は厳しいが、理不尽に怒ることはなく、いつも正しいことを言っている。そんな先輩だ。
今までに1回だけ、Bさんとペアを組んだことがあった。その時は、「Bさんとペア」ということだけであり得ないくらい緊張して、何もかもうまくいかなかった。萎縮して報連相もできないし、分からないことを聞こうにも怖くて聞けない。当然、とんでもなく怒られた。怒られるから、余計に萎縮する。話しかけようとしたら動悸がして、口が渇く。悪循環である。今思えば、何をそんなに緊張していたのかと思うのだが・・・。
1回目がそんな状態だったので、あれから数ヶ月経った今回、少しでも成長した姿を見せたいと思った。そして、Bさんから少しでも学びたいと思った。
いつも以上に報連相を意識して行動した。自分にできることは率先して行い、わからないことはすぐ質問した。Bさんが患者指導をする時には声をかけて見学させてもらった。
そしてその日も、Bさんや他の先輩に怒られることなく仕事を終えた。帰り際、Bさんに「Bさん、お疲れ様です。今日はありがとうございました。」と声をかけると、笑顔で「お疲れ様。ありがとうね。」と返してくれた。
言葉では表現できないほどの安堵と達成感だった。
厳しい先輩に怒られなかったからって、我ながら単純だと思う。
でも、ここ2ヶ月間でメンタルがどん底に落ち、「消えたい」とさえ思っていた私にとって、この2日間は確実に自信となった。
少し、行動の成果が出てきたのだろうか。
定時上がりの夜勤
あの2日間以降、先輩に怒られたり指摘されたりする回数が明らかに減った。それに伴って、気持ちがどんどん軽くなっているのが自分でも分かる。
そして、あの2日間を終えて初めての夜勤は、定時で退勤することができた。病棟全体が少し落ち着いていたのと、患者数がいつもより少なかったのもあると思うが、自分なりに効率よく業務を進めることができたと思う。
定時上がりなんて、いつぶりだろう。思い出せないくらいだ。
更衣室を出ると、雲一つ無い青空だった。
清々しい気持ちだった。「私も少しだけ、成長できたのかな」と思った。
ずっと行きたいと思っていたカフェのモーニングに行った。平日だったので人も少なく、すぐに入ることができた。ゆっくりコーヒーを飲み、スーパーで夜ご飯に使う食材を買ってから、一旦家に帰った。
そして服を着替えて、日常の生活圏とは少し離れた町へ、1人で散歩に出かけた。
初めて見る町並み。自分を知る人はいない。気楽だった。
肩の力を抜いて、何も考えず、行き先を定めず適当に歩いた。
レトロな町並みや商店街のお店を眺めながらゆっくりと歩いていると、喫茶店を見つけた。
店の前で入るか迷っていると、「入られますか?」と知らない女性に声をかけられた。彼女はどうやらそのお店の常連のようだった。そこで待ち合わせをしているとのことで、「ランチもデザートもおいしいですよ。」と勧めてくれた。
知らない町で、知らない人とおしゃべりして、知らない喫茶店に入る。なんだかわくわくした。私はそのお店で休憩することにした。
カウンター席に座り、のんびり過ごした。そこは人気店のようで、誰かが出て行くと入れ替わりで誰かが入ってくる。店員さんも親切で、また来たいと思った。
喫茶店を出て、またひたすらに歩いた。桜や道端に咲いている花を眺めたり、ぼんやりと川の音を聞いたりした。そして家に帰り、簡単なご飯を作った。なんだか幸せで、充足した気持ちだった。ベッドに入り、早めに眠った。
そして、次の日勤の朝。吐き気は無く、ヨーグルトを食べて出勤することができた。身体も少し軽くなっている気がした。
頑張ろうと思えた
プライベートの時間を確保すること。自分の好きなことをして過ごすこと。それがこんなに心身を回復させてくれるとは思わなかった。
久しぶりに、「幸せ」と思えた。そして、自分はコーヒーを飲みながらゆっくり過ごすのが好きだったこと、散歩が好きだったこと、カフェ巡りが好きだったこと。
忘れていた。毎日毎日怒られて、自信がなくて、自分を責め続けて、仕事のことばかり考えて、プライベートな時間なんかなかった。
やっと自分の好きなことを思い出した。そして、「よし、頑張ろう」と思った。
先輩に怒られないようになったから、定時で上がれたからって、我ながらチョロいとは思う。でも、それでメンタルが急激に回復するくらいには、自分は追い込まれていた(自分で追い込んでいた)のだと思う。
ストレスフルな毎日。頑張りたくなかった。1日でも早くやめたかった。「消えてしまいたい」と思った。
でも、できない自分をどうにかしたくて、自分なりに行動した。その結果が少しずつ出始めて、自信も少しだけついた。今では「頑張ろう」と思えるし、「消えたい」という気持ちもなくなった。
新人さん、仕事が辛くて悩んでいる方へ
新人看護師の方、仕事が辛くて悩んでいる方に伝えたいことは、
「誰かに思っていることを話してみる」「自分の好きなことをして過ごす時間を確保する」この2つがとても大切だということ。
「ワークライフバランス」という言葉はよく耳にするが、この1年間を通して、その意味をようやく理解した気がする。
自分の好きなことをして過ごす時間が少しあるだけで、驚くほどリフレッシュできる。そして「次の休みには○○をしよう、○○に行こう」と次の計画を立てることでモチベーションにつながる。「趣味」と呼べるほどのことがないという方でも、好きなものを食べたり、好きな映画を見たり。思う存分寝る、だけでもいい。
そしてもう1つ、よく聞く言葉。
「辛い時は1人で抱え込まないでください」
何回聞いたことか。入職した直後の研修でも聞いたし、先輩にも幾度となく言われた。ネットやSNSでもよく目にする。
でも、「誰かに話す」ことが意外と難しい。先輩に話したくても、忙しくて時間が無かったり、プライドが邪魔をして、弱い自分をさらけ出せないこともある。
しかし、1人で悩みを抱え込むことがいかに危険か、身をもって学んだ。ストレスが限界に達すると、本当に死んでしまうかもしれない。
事が起こってからでは遅い。誰でも、どんなことでもいい。信頼できる友達、同期、家族、パートナー・・・。少しでもいいから話してほしい。話すことで単純にストレスを発散できるし、自分の考えを整理して、自分が何に悩んでいるのか、これからどうしたいのか等が分かったりする。
「本当に誰も相談相手がいない」という場合は、こんな風に文章に起こしてみるのも良いし、私のこのブログやインスタにメッセージを送ってもらっても構いません。
このブログが、同じように仕事が辛くて悩んでいる方の目に留まり、少しでも共感してもらえたり、誰かに相談するきっかけとなれば嬉しいです。